今月の目的は?
坂東玉三郎が毎年熱海で「熱海座」と呼ばれる単独公演を開催しています。2023年11月の公演の時の演目が今回の演目「阿古屋」でした。熱海では「三糸の調べ」という演題になっていました。
「熱海座」はMOA美術館の中にある能楽堂が会場で、客席数は500席ほどです。その時は玉三郎さんの正面、前から3列目くらいでしたので、「かぶりつき」と言っても良いほどの近さで、指使いからまばたきまでしっかりと見ることができました。その時の投稿熱海座・坂東玉三郎特別公演も合わせてお読みください。
今月の歌舞伎座でも「阿古屋」を見るのが第一の目的です。熱海座の能楽堂とはサイズ感に違いがあるので、どんな雰囲気になるのかと楽しみでした。
物語は
平家滅亡後、平家の武将悪七兵衛景清の行方詮議のために源氏方に引き出されたのは、景清の愛人の游君阿古屋。景清の所在を聞き出すため、岩永左衛門は阿古屋に拷問をかけようとします。
詮議の指揮を執る秩父庄司重忠が用意させたのは、琴、三味線、胡弓。言葉に偽りがあれば、音が乱れるはずだと、それぞれの楽器で三曲の演奏を阿古屋に命じます。淀みなく3曲を弾き終えた阿古屋は、無事放免されるのです。
まずは菊之助の秩父庄司重忠、種之助の岩永左衛門が登場。岩永左衛門は本作が人形浄瑠璃が元とあって、人形振りと言って文楽の操り人形のような動きをします。後ろに黒子が二人付き、いかにも文楽のような動きで演じるのですが、これがずっとですから大変な体力と演技力ですね。種之助さん、お疲れさまでした。
花道から進んでくる阿古屋=玉様があっという間に歌舞伎座中を支配します。傾城としての品格や色気が存在そのものです。
游君といえども、最上級。景清の行方を知っているだろうと責められ、「いっそ殺してくださんせ」と啖呵を切る姿にも、品と気風の良さを兼ね備えてこその姿と感じました。
疑いを晴らすための琴、三味線、胡弓を阿古屋は完璧に弾きこなさなければなりません。思い衣裳と大きな帯が視界を塞いだ状態で演奏します。実際のところ本当に完璧なのかは私にはわかりません。それでも、多くの囃子方との掛け合いもありますから、音を外したりするとさすがにわかってしまうのではと感じました。
今回は8列目でしたから、熱海座の時ほど近く、細かく観ることはできませんでしたが、歌舞伎座の大きな舞台での大満足の阿古屋でした。
コメント
コメントを投稿
コメントありがとうございます!