仁左衛門様まで5センチ

片岡仁左衛門と坂東玉三郎
休演が明けて

今月も待ちに待った「仁左玉」歌舞伎「与話情浮名横櫛」(よわなさけうきなのよこぐし)、いわゆる「お富与三郎」を観てきました。この二人での上演は18年ぶりとのことです。

本来は昨年6月に予定されていましたが、仁左衛門様の帯状疱疹のために演目を変えての興行でした。また、今月も仁左衛門様の体調不良により、3日間、夜の部が休演になりました。この日、チケットを持っていた方はどんなにか残念だったことでしょう。

当日も心配で心配で、歌舞伎座に向かいながら、頻繁にネットニュースを検索し、また中止になっていないか確認しながら行きました。歌舞伎座の入場が始まっているのを見た時はホッとしました。

階段が目の前に

歌舞伎座の大道具階段
コロナ対策もだいぶ緩和され、今回は「木更津海岸見染の場」で、仁左衛門様が亀蔵さんと「客席降り」をするという情報を得ていました。実際どこを歩くかは知らなかったのですが、幕が上がる直前に、スタッフの方が私のすぐ目の前に舞台から階段を下ろして設置しました。

「え~。うそ~。ドキドキ。」私はニヤニヤが止まりませんでした。周辺の人たちはその階段の意味に気付いていない様子でした。実際に芝居の中で、仁左衛門様が階段を下り始めてから、初めて周りの人たちが歓喜の声を上げました。

私の席は今回はかなり前方の通路側でした。まさに仁左衛門様が私の横を衣擦れの音まで聞かせながら歩いて行きました。その距離は過去最接近の5センチ先です。

歌舞伎座座席表
途中、亀蔵さんとのやり取りは「木挽町では歌舞伎座10周年で賑わっているらしいね。昼夜両方見ると良いことがあるらしいよ。」でした。場内ウットリ、そして大拍手。

確認したところ、昼の部のチケットの売れゆきがあまりよくないようでした。参考までに座席表で歩くルートをご紹介しておきます。

二人の世界

「木更津海岸見染の場」からまさに二人の世界でした。「姿よし」の二人が出会いの場面を細やかに美しく演じていきます。
片岡仁左衛門と坂東玉三郎

「赤間別荘の場」では、お互いの気持ちを確かめ合い、お富主導で寝屋に入り、自ら帯を解くところまで見せてくれます。私の席からは透かしの襖の中がある程度見えるようになっていましたが、これは3階席でも見えていたのでしょうか?「桜姫東文章」にも並ぶ、濡れ場でした。

クライマックスの「源氏店の場」。
湯上りの玉三郎様が、鏡に向かって化粧をしながら場面が進みます。丁度玉三郎様の顔が私の席の方に向かっていたので、じっくり拝ませていただきました。

或る妾(お富とは知らずに)に金をせびりに来た与三郎が、寄りかかりながら成り行きを見守る姿、あぐらをかいて背中を見せてキセルを吹かす姿。どれも仁左衛門様にしか出せない色気ですね。

私の大好物「仁左様のすね」も最後に見せていただき、眼福でした。
後半には、もうこの二人の「お富与三郎」は最後かもしれないと、涙が出ました。仁左衛門様の体調が何より心配です。毎回毎回、これが最後と思って見つめています。
左團ちゃんの体調も心配です。早くお元気になられますように。。。

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