とんでもお客様④早朝に「名簿を作れ」

前夜から始まっています

電話で困っている人
ホテルで就寝しようとした時間にお客様から電話がかかってきました。時計を見ると24時近い時間でした。何事だろうと心配して電話に出てみると、明日の観光のことで質問があるというのです。

緊急でないなら明日にしてほしいと言いたかったのですが、だいぶ「くせ強め」のお客様だったので、後々「対応が悪い」などとクレームになる恐れがあったので、とりあえず質問に答えていたのです。

ある程度の心配は解かるのですが、夜中に電話をして聞くほどの質問内容はなく、今までに行った旅行の話や住んでいたイギリスの話を延々と話していました。いつまでも話が終わらないので、「ご主人はどうしていますか?」と聞いたところ、「とっくに寝ているわよ」との返事でした。

かなり眠かったのと、話が終わる気配がまったくないので、意を決して伝えました。「○○様、申し訳ないのですが、体調管理のためにある程度の睡眠を確保したいので、お話はまた明日にしていただけないでしょうか?」と。すると謝ることもなく「じゃあね」と、やっと電話を切ってくれました。この時、夜中の1:30でした。

早朝にかかってきた電話

次に電話が鳴って時計を見たところ、5:00頃でした。緊急かもと思い、「はい、添乗員です。何かありましたか?」と緊張して受話器を取りました。
「あのね~、参加者の名簿を作った方がいいと思うけど~」と言っています。「何?朝5時ですけど」と思わず突っ込みたくなりました。

自信満々の様子の人
声で誰なのかはわかったのですが、名乗っていないことを自覚していただくため「すみませんが、お名前を」と私。「○○です」とお客様。その方は、私が深夜まで話し相手になった奥様のご主人でした。

「個人情報保護法というのがありまして、今は添乗員が名簿を作って配ったりできないので、お客様どうして住所やメールアドレスなどを交換していただけませんか?」と伝えました。ところが「名簿を作らないツアーは良いツアーとは言えないね~」という返事でした。

実は、このご夫婦は長くイギリス駐在の経験があり、奥様も英語が堪能です。奥様についステキなお客様③英語の先生でもご紹介しています。2人とも自信満々なせいか、かなりのKYです。いつも一方的に自慢話を聞かされるため、食事の時も同じテーブルになるのを皆が嫌がるようになっていました。このご夫婦をきっかけに他の方たちがかえって団結して仲良くなっていて、それぞれLineやメールアドレスの交換をしているのを、すでに私は何度も見かけていました。

頭痛の種

私のそのツアーの一番の頭痛の種は、身勝手なふるまいと上から目線の会話で他の方から浮きまくっているこのご夫婦だったのです。私が説明をしても「名簿を作らないツアーは良いツアーじゃないと、ボクは思うんだよ」と、まだ言っています。自分がツアーのために良い提案をしているのにといった口ぶりで、私の回答に不満そうです。

寝不足の人さすがに腹が立ってきました。「今日の出発時間は9時ですよね。緊急だといけないので何時でも電話には出ますが、緊急でないお電話を深夜や早朝にかけるのはご遠慮いただけますか?」と言ってしまいました。それなのにまだ、「でもね~▲※〇✕◇」と何か言っています。

とどめを刺しました

私はとどめを刺さなければなりませんでした。

「奥様はまだ寝ていますよね?昨夜奥様が電話をしてきておしゃべりに2時間近くお付き合いしたので、私が寝たのは深夜の1:30です。それなのに、ご主人から緊急でないご用事で電話いただくのでは、私も体調管理ができません。ケガをしたとか、体調が悪いとかなら何時でも対応いたします。でも、お急ぎでないご用事は朝8時から夜8時の通常業務時間内にしていたきたいです」と。

「あ、そう。でも、みんなに聞いてみてね」とご返事。ここまではっきり言われても、まだ解っていないのです。腹が立ってしまった私は、結局その後、眠ることができませんでした。

みんなに聞いてみました

バスの中で話をする人
結局、私の説明は理解していないようですが、お客様はお客様です。「対応が悪い、客の要望に応えない」というクレームにならないよう、観光バスの中で名簿について参加者全員の前で話をしました。

「このたび○○様のご発案で、参加者の名簿を作ってはどうかとお話をいただいています。ただし、個人情報保護法の問題もありますので、強制ではありません。名簿に名前や住所を乗せても良いという方は、本日夕方までにお申し出ください」

「○○様のご発案」と「個人情報保護法」は特に強調して言いました。すると、皆が苦笑いしているのがわかりました。挙手を求めたら誰も手をあげないことは予想できました。ご主人のメンツも立てなければなりませんので、手をあげるのではなく、個人的に申し出ていただく方法にしました。案の定、誰一人名簿を作るための申し出をしてくる人はいませんでした。

新聞を読む人
ご主人には夕食の時点で、「残念ですがご希望の方がいらっしゃいません」と報告をしました。「そんな時代かね~」と最後は諦めるしかないことになりました。

年配のお客様には世の中の動きを掴めていない方も多いです。しかしこのご夫婦は、自分たちが優秀で何でも知っていると言わんばかりのふるまいを毎日していたのです。

海外では、毎日新聞が読めないとご不満のようでしたが、毎日新聞を読んでいるなら「個人情報保護法」についてもご存知のはずです。自分のしたいことと法律や世の中の流れがリンクしなかったようです。

「添乗員が気が利かないから、ボクが提案して名簿を作らせ、皆に感謝されたんだよ」という話にしたかったのでしょうか?残念ですが、昭和は遠い昔になってしまったのです。

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