坂東巳之助の口

坂東三津五郎

坂東三津五郎七回忌

私が歌舞伎初心者だった頃、勘九郎と八十助の「棒しばり」を見ました。
当時の勘九郎は今の勘九郎のお父さん、八十助は右の写真の坂東三津五郎です。

歌舞伎って何て楽しいものだろう。巧者である二人の役者のことも大好きになりました。
二人がその後、18世・勘三郎、10世・三津五郎になってもその都度、舞台が楽しみだったことに変わりませんでした。

しかし非情なことに、先に勘三郎が、後を追うように三津五郎が、あっという間に逝ってしまいました。

勘三郎が亡くなり、まだ三津五郎が元気だった時、三津五郎&息子・勘九郎の「棒しばり」を見る機会がありました。涙がとめどなく流れて大変でした。

その後三津五郎が亡くなり、巳之助&勘九郎の「棒しばり」も見ましたが、こちらも感慨ひとしおでした。二人の父親を見て、更に息子たちの舞台を見ることができるのが、歌舞伎ならではですね。


坂東巳之助の大きな口

今月の歌舞伎座・第二部は追善興行です。三津五郎が襲名披露で演じた「寿曽我対面」の曽我五郎役を今回は息子の坂東巳之助が演じました。

寿曽我対面

所縁の先輩方(私の大好きな左團次さんも)に見守られながら、荒々しく花道から登場した巳之助に歌舞伎座の空気が一気に盛り上がりました。

隈取られた大きな目は、仇討ちの心に燃えて大きく見開かれました。何よりも驚いたのは歯切れ良いセリフの口元でした。かなり大きな口という印象です。

そういえばお父さんも、口は大き目でしたね。ナレーションの仕事も多かった父親の爽やかな口舌を受け継ぎ、同じ番組でナレーションを引き継いでいるのも嬉しいことです。

しかし私にとっての二人の印象には少し違いがあります。父親・三津五郎は「柔の中に剛」、息子・巳之助は「剛の中に柔」というものです。

体つきや、顔の作りが巳之助の方が大振りだからでしょうか?今回のような荒事の大きな役にもピッタリと思いました。
今回を機会に、ますます色々なチャレンジをして大きな役者になっていってほしいです。

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