日本人の質問②現地ガイド~資格編~

ヨーロッパの街角
 現地ガイドについて今回は資格編、次回は
勉強編と、2回に分けてご紹介します。

海外旅行先で「日本人の現地ガイド」に案内してもらったことがあるという人は多いと思います。
都市によっては観光時間が短く、市内をササっと回らなければいけない場合もあります。名所の案内をしながらその国や町の歴史、エピソードを詳しくも簡潔に紹介し、ついでに自由時間の過ごし方までアドバイスしてくださるガイドさんもいます。
添乗員としてはありがたく、「素晴らしい◎」と感心しきりなんです。

それなのに。。「このガイドさんの本職は何ですか?」「普段は遊んでいるのですか?」
という質問をするツアー参加者の方が時折あります。本当にびっくりします。
日本人の、特に年配者の中には、海外で暮らしていること自体が、「自由でいいわね」と感じ、「ちょっと説明しに来た」くらいの受け止め方になるようです。
素晴らしい説明だったのに、わからないのかな?」と残念に思うことが多いのです。

自由の女神
現地ガイドを代表的なパターンで分けてみましょう。
① 現地の人と結婚している
② 仕事、留学、旅行がきっかけで居住
③ 現地のガイド会社に採用された
④ ワーキングホリデービザで滞在中(制度のある国)

①の場合、多くは永住権や市民権を持っており、働くことができますが、②と③の場合は現地で働くために就労許可が必要です。すでに長年住んでいて永住権や市民権を持っている人もいます。④は国と期間は限られますが、滞在費を賄うための就労資格はあります。

私は③のパターンで北米で現地ガイドとして働いたことがあります。が、働きたいからといって簡単に就労許可が下りる国は少ないです。

私の場合は添乗で何度か行くうちに、現地のガイド会社からの誘いがあり➡その会社が就労ビザの申請書類を作成し➡私本人が移民局に行って書類審査と面接を受けて就労ビザを取得➡就労ビザがあることを条件に、社会保険番号を申請・取得し➡やっと働き始めることができました。ここまでの道のりは大変でした。

この時、移民局に持って行ったパスポートは各国のスタンプだらけでした。移民局の人は短期間に出入国を繰り返す「怪しい人物」と考えたようで、添乗員をしていたことを必死に説明しなければなりませんでした。
ドラマの最終回などで主人公やその恋人が海外に突然行ったりしますが、旅行ならともかく、行ってすぐに働いているシーンを見るたび「ウソでしょ!」と言いたくなります。

ガイド資格が必要な国もあります。私は資格の必要でない国で働きましたが、ヨーロッパの多くの国、観光が大きな収入源である国では、国家資格がないと観光案内ができません。

フランスの場合 指定された大学で1年間の通訳案内士コースを受講し、母国語以外の最低2か国語も必修。実地研修2~3ヶ月。又は大学で言語、歴史、美術史、文学のいずれかを専攻し、外国語での面接試験に通った者。
イタリアの場合 永住権を持つ者。州や県によって違いがある。州によっては職業教育コースで400時間の講習と2日間にわたる筆記と口述の試験が課される。歴史、美術、考古学の学位を取得している者は試験が一部免除になる。
イギリスの場合 公の訓練機関による認定制度。筆記&実技試験がある。レベル3(グリーンバッジ・地区限定)とレベル4(ブルーバッジ・範囲限定なし)が私たち日本からの観光の案内をします。最上級資格のブルーバッジ取得者には取得後の制度があり、様々なアクティビティを実施、参加したものがポイントとなり、データベースに記録される。

ここまでは読むだけでもめまいがしそうな資格ですね。

ドイツの場合 公の機関による認定制度。ガイドとしての3年以上の実務経験と400時間の研修受講&筆記試験。ただし、無資格でも罰則はなく、多くの団体ツアーは日本からの添乗員が案内しているのが実情(特にロマンチック街道)。
アメリカの場合 全国的な制度はなく、州によっては民間団体がある。無資格でも罰則なし。

資格のないガイドが案内する時は、現地人の資格持つガイドが同行し、「日本人の通訳」が案内するという形で観光が行われます。この場合も通訳資格が必要な場所があります。
資格のないガイドが質が低いということではありません。豊富な知識と、ホスピタリティで皆が大満足の案内をしてくれるガイドさんはたくさんいます。

観光時にアシスタント的に後ろからついてくる現地人がいたという経験はありませんか?これは、案内している日本人のガイドさんがまだ資格を取得していない場合です。資格のない人に勝手に案内をさせないことで、資格のある人の就労機会を奪わないようにするためです。小さい町で短時間の観光の場合や、その街に日本人のガイドがいない場合は、現地ガイドが英語で案内し、添乗員が通訳しながら観光をします。

町から町への移動の間は、ガイドがいなくてもOKですが、下車して観光する場合はガイドを雇わなければいけないという厳しいルールの国もあります。「少しだけ」のつもりで説明をしていたら、有資格ガイドから警察に通報されたという添乗員もいるのです。

パスポートのイラスト
💬現地ガイドについてここまで触れてきたことは、すべての国の話ではありません。行ったことがない国もあれば、例外の国もあります。アジア諸国は国の日本語を話せる人が多いため、日本人の現地ガイドが来ること自体ほとんどありません。中国などの社会主義国では、最初から最後までピッタリ現地の日本語を話せるガイドが案内し、土産店の入店もセットになっていたりします。

🏰 次回は現地ガイドがどのように勉強しているのか?についてお知らせします。

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