片岡仁左衛門・その美・横顔

片岡仁左衛門
その日、涙があふれ出ました。

松竹歌舞伎会(歌舞伎のファンクラブ)から4月の演目の発表があった日です。
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。。。。コロナもストレスも全部吹き飛ぶほどの嬉しさ!

思えばコロナのせいで、楽しみにしていたミュージカルも、海外に出かけて楽しむ予定だったコンサートも中止になりました。
仕方がないと自分に言い聞かせる日々。

歌舞伎座は使用座席を減らし、感染対策を万全にして再開してくれているので、その都度楽しめていましたが。こんな日がまた来るなんて、なんて素敵なんだろう。

片岡仁左衛門と坂東玉三郎「桜姫東文章」の再演です。

桜姫東文章のポスター
1985年以来、36年ぶりの「孝玉コンビ」による桜姫をまた見られるなんて、夢のようでした。

当時の私は歌舞伎初心者。華やかな歌舞伎の舞台を2階の一番奥の方から見ていました。
この時はまだ片岡孝夫だった現在の仁左衛門と玉三郎コンビの舞台は、見る者を最高に夢見心地にしてくれました。

美しい玉三郎はもちろんですが、片岡孝夫の「美」にその後、永遠に魅入られることになろうとは。。

右のポスターの華やかさも特筆すべきです。歌舞伎公演のポスターなのに、明らかに濡れ場を連想させる、仁左衛門の足の位置!ゾクゾクします。

今年2月にも玉三郎&仁左衛門の共演がありました。「於染久松色読販」と「神田祭」でした。両演目も二人の魅力満載で、素晴らしく堪能できました。

ですが、こんなにも「桜姫」に狂喜するのは私だけのノスタルジーにすぎないのかもしれないと思っていました。
ところが、二人の「桜姫」再演は大きなニュースになりました。やはり伝説であり、多くのファンが歓喜する夢の舞台だったのです。

片岡仁左衛門という役者を讃える言葉は、私が言うまでもなくあふれています。
「声よし、顔よし、姿よし」はこの役者のための言葉でしょう。
元々の声の良さはもちろん、せりふの切れが抜群。身長が高く、細身。77歳にして、体型を美しく保ち、2枚目役を更に魅力的に見せていることは驚異。

顔が良いのはもちろんですが、特に私が毎回見惚れてしまうのは、その横顔の美しさです。

丁度良い画像がなかなか見つからなかったのですが、「女殺油地獄」のポスターで横顔の美しさを堪能してください。

鼻筋の美しさから、あごのラインにかけてのフォルムは浮世絵の美を思わせます。

一番上の普段着の写真では素敵な老紳士といった様子です。
しかし舞台に上がり、役になるといまだに強烈な色気を感じさせる
のです。

義理に生きる武士の役、平安貴族の菅公の役も素敵でした。昨年の勧進帳の弁慶も素敵でしたが、弁慶としては上品で美しすぎました。やはり「色悪」を演じる仁左衛門が私には一番です。
こんなほめ方は本人の本意ではないかもしれません。ミーハーなファンのひとつの意見としてください。

大人になって、高額な席で歌舞伎を見るようになって気付いたことがあります。
仁左衛門は本当に泣いています。悲しく、苦しい役の時、役そのものになりきって泣いています。はらはらと落とす涙に初めて気づいた時、改めてこの人にとっての歌舞伎が命なのだと思うようになりました。

「桜姫東文章」発売日は、10時5分前からパソコンをスタンバイしてチケットを購入しました。36年前は2階の奥でしたが、今回は前から3列目です。
当日は朝から全てが上の空。ひたすら開演の瞬間を待ちました。

品のよい僧清玄から悪事をはたらく釣鐘権助への変化。一緒に行った歌舞伎初心者の友人は、「同じ人なの?ホント?すごいね!」と感想を漏らしました。
権助が桜姫への文を預かって花道から退場する時に、ニャッとするシーンがあります。
思いっきりハートを撃ち抜かれてしまいました。

現在は歌舞伎座のコロナ対策として1日が3部制になっています。
今回の「桜姫」も、本来は2部制のどちらかで「通し」で見たいところですが、時間の関係や俳優の体力を考慮するためか?4月は「上の巻」、5月は無しで、6月に「下の巻」を上演します。
一気に見たい気もしますが、ドキドキを長続きさせながら6月を待つことにしましょう。
と言いつつ、今月、もう一回見に行くのです。二人の「桜姫」。これが最後と覚悟しています。目と心に焼き付けてきます。

💢この後、緊急事態宣言再発出のため2回目の予定は中止になりました!大ショック!でした。

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