とんでもお客様㉒酔い止め薬

薬のイラスト
酔い止めが欲しいと

ツアー中にお客様から「○○の薬持っていますか?」と声がかかることがあります。特に海外では整腸剤や、風邪薬を持っているかと聞かれることはよくありました。

私も以前はお客様へのサービスの一部と思い、一般的な薬は常備していました。現在は薬剤師の資格がないのに、薬をお渡しすることは禁止されています。ばんそうこう程度ならお渡ししますが、現在は薬事法の話をしてお断わりしています。

最近では周知がされてきたのか、このような事例はかなり少なくなりました。ケガの応急処置については研修を受けていますので、遠慮なくお申し出下さい。

酔い止め薬のイラスト
酔い止め薬が欲しいと

先日国内ツアーで、朝の出発時間ギリギリに「添乗員さん、酔い止め薬持っていない?」とお客様が声をかけてきました。私は持っていないことを話し、ホテルの方に手に入らないか聞いてみます」と答えました。

ホテルの方は、「近所の薬屋さんで買ってきます」と言ってくれました。まだ、薬屋が開く時間とは思えませんでしたが、知り合いだから大丈夫だとのことでした。10分ほど経った頃、ホテルのスタッフが買ってきた酔い止め薬を渡してくれました。私はお客様に「酔い止め薬買ってきてくれましたよ。600円だそうです」と伝えました。

じゃ、いらない!

困っている女性のイラスト
すると「600円?私が払うの?じゃ、要らない!」と言いました。フロントの方も目の前にいます。私は「でも、お客様が欲しいというのでわざわざ買いに行ってくれました」と食い下がってみました。

ところがお客様はさらに信じられない一言を発しました。「買ってきてなんて頼んでないでしょ?」と。確かにそうですが、自分のためにわざわざ買いに行ってくれたことを何とも思わないのでしょうか?私は返す言葉が見つかりませんでした。

仕方がないので、私はホテルのスタッフに自分のお金を渡し、90度に腰を折ってお詫びをしました。ホテルの方も一部始終を見ていたので「いろいろな人がいるものですね~」と慰めてくれました。

その酔い止め薬は、しばらく持っていましたが利用することなく使用期限を過ぎましたので廃棄しました。いろいろな人に出会う仕事で、たいていの事には驚かなくなっていた私でしたが、この時は久しぶりにビックリしました。

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