添乗員のグチ⑱発表会

「現地案内人」という人々

観光案内人のイラスト
ツアー添乗をしていると、観光場所によっては「現地案内人」と言う人にお世話になることがあります。たいていはその町や施設の観光案内所に属している方々です。案内人さんの多くは、地元の歴史好きで郷土愛に溢れた人たちで、元教師などという人もいます。東京から大勢のツアー客が来ると、大変張り切って案内していただけます。

案内人さんたちには、旅行会社からは数千円のお礼をお支払いすることが多いです。ご本人たちには交通費+お礼程度の金額が支払われているようです。いわゆる完全に無料のボランティアで案内する方もいるので、その場所場所で違いはあるようです。

添乗員としては地元の方からより詳しい話が聞けるので充実した観光になり、ありがたく感じることも多いです。ただし、困ることも多いのが現地案内人さんです。

こちらの都合は無視

地元の方々ですから、愛する場所や建物を「知ってほしい」「見てほしい」の気持ちが強いです。困るのは、こちらがお願いしている出発時間を考えずに案内する方が大変多いということです。私が「そろそろ出発時間なので」と言っても、まだ半分も説明が終わっていなかったり、不満げに「今日は時間がないな~」などと、私のツアー運営に問題があるような発言をされたこともあります。

焦っている女性のイラスト
ある時、お城めぐりのツアーに行きました。初日は2つのお城をめぐる予定でした。多少融通が利く土産店などと違って、お城の見学は閉館時間が決まっており、夕方5時閉館と場合、受付は4時半までなどと決められています。1ヶ所目の城は心配ないのですが、予定通りのタイムスケジュールで進めないと、2か所目のお城の見学がかなり忙しくなってしまいます。

すでにイヤ~な予感していた私が打った対策は、バスの中でお客様に現地案内人の事情を説明し、次のように打ち合わせをしました。「皆様の本当の出発時間は14:30ですが、案内人さんには14:15分と言いますので、笑ったり間違えたりしないでくださいね」と。

この時も、案内人さんには出発時間と、次のお城にも時間内に行かなければならないことを伝えて案内を始めてもらいました。明るい感じの70歳位の案内人さんで、「ボクは慣れているから大丈夫だよ~」との返事でした。

残念ながら予感的中

お客様が案内人さんについて駐車場から出発し、お城の観光を始めました。私はドライバーさんとその後の行程の打ち合わせをしなければなりませんでした。約10分後グループを追うと、まだ駐車場の壁沿いにいました。近づいて話を聞いてみると、自分がテレビ番組で「芸能人○○さん案内をした」という自慢話の最中でした。

お城のイラスト
そのお城は天守閣が小さく、1度に入れる人数が制限されています。私のお客様だけでも2回転しなければならないので、ゆっくりしている場合ではないのです。私はたまらず「すみませんが、時間配分を考えて天守閣方面の説明を優先していただけませんか?」と言いました。すると私のお客様がニヤニヤしています。

やっと建物の見える場所に移動し、本来の説明を始めてくれましたが、その時、もう一つのツアーがいることに気がつきました。あちらのグループも30人以上いる様子です。

だから言ったでしょ!!

案の定、もう一つのグループが先に天守閣に入ってしまいました。私たちは次のお城に行く予定もあるので出発時間は延ばすことができません。仕方がないので、「天守閣に上がらなくても良い方はトイレを済ませてバスへ、どうしても天守閣に上がりたい方は急いで見てきてください」と声をかけました。

困っている女性のイラスト
せっかくの城めぐりツアーなのに、最後はバタバタでした。普段は多少のことは諦めの境地に入っている私ですので、70歳位の案内人さんに怒ったりしませんが、さすがにこの時は言ってしましました。「せっかく来たのですから、お客様が満足できるように案内して下さい」と。

「お客様が満足できるように」を強調しましたが、わかってもらえなかったことでしょう。そうです。案内人さんの様子を見ていると「お客様のため」ではなく、「自分のための発表会」「自分の満足」になってしまっている方が多いのです。

多くの現地案内人さんは素晴らしい方が沢山いらっしゃいます。でも、今回ご紹介したような人も少なからずいるのです。困った現地案内人さん「あるある」でした。

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