高尚な趣味
「私の趣味は歌舞伎を観ることです」と言うと、時々「高尚な趣味をお持ちなんですね」と言う人がいます。「そんなことありませんよ」と言っても、見たことがない人にとっては「値段も高い」「何を言っているのかわからない」「敷居が高い」と言うイメージになってしまうようです。実際私にとってもそのようなイメージはあったと思います。初めて見るまでは。
私が初めての歌舞伎で見た演目は「棒しばり」でした。中村勘九郎(18代勘三郎)と坂東八十助(10代三津五郎)の息の合った巧者のコンビで、劇場は笑顔と拍手に溢れていました。学生時代だったので、3階席しか買えませんでしたが、劇場の雰囲気、芝居の楽しさを存分に味わうことができました。今思うと宝物のような時間でした。その時歌舞伎の世界に誘ってくれた友人には今でも感謝しています。
「棒しばり」とは?
外出の用ができた大名は、酒好きの太郎冠者、次郎冠者を残しておくのが心配になり、一計を案じて太郎冠者を後手に、次郎冠者の手を棒しばりして出掛けます。残った二人はいろいろ工夫して、とうとう酒を呑んでしまい、いい気持になって踊っているところへ主人が帰って来るという筋。
「自由に身動きの取れない状態でいかに二人で工夫して酒を飲むか」が唯一のストーリーです。誰が見ても楽しく見られる演目ですね。狂言が元になった演目ですが、それを感じさせる松の絵の背景になっています。
初めての歌舞伎におすすめです
初めての歌舞伎でとにかく「楽しい」と言うイメージになったおかげで、その後今に至る観劇につながりました。もし、学生時代に学校行事の歌舞伎教室等で「勧進帳」あたりをいきなり見たら、その後にはつながらなかったかもしれませんね。「勧進帳は」歌舞伎を代表する演目ではありますが、物語の背景や見どころを解っていないと、一般的なイメージ通り、ちょっと退屈と感じたり、何を言っているのか難しいと感じる演目です。
さて、浅草公会堂を会場とする2025年1月の「新春浅草歌舞伎」の演目に「棒しばり」を見つけました。今私は、歌舞伎に興味があっても足踏みしていた方に強烈にお勧めしています。
浅草歌舞伎は若手の演者を中心に配役されているので、フレッシュな魅力にあふれています。今回も平均年齢が24歳だそうです。若手のホープ市川染五郎クン、踊りの上手い中村鷹之資クンが演じる「棒しばり」は本当に楽しみですね。
浅草歌舞伎のもう一つのおすすめポイントは、若手が演じることでチケット代が1等でも9500円、2等で6000円、3等で3000円と、歌舞伎座よりも格安になっているということです。年始の興行なので、華やかな雰囲気に包まれて楽しく鑑賞できること間違いなしです。
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