秀山祭九月大歌舞伎「妹背山婦女庭訓」

妹背山女庭訓ポスター
秀山祭九月大歌舞伎

夜の部・妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)を観てきました。全五段のうち三段目の「太宰館花渡し」と「吉野川」の2幕構成。主な配役は、

太宰後室定高 坂東玉三郎
大判事清澄  尾上松緑
雛鳥     尾上左近
久我之助   市川染五郎
蘇我入鹿   中村吉之丞

まず歌舞伎座に入って通常と違うのが、花道が上手側にもう1本設えてあることです。いつもと違う会場に期待感が高まりました。

「太宰館花渡し」の場は20分程。蘇我入鹿ということは、時は600年代の飛鳥時代。権力の頂点にあった入鹿の無理難題に、太宰後室完高と大判事清澄が翻弄される物語のきっかけを説明する一幕です。

吉野川の舞台
目の覚めるような吉野川

二幕目の「吉野川」の場ではまず、舞台上の大道具が華やかです。中央に吉野川、川を挟んだ妹山に定高、背山に清澄の館が配されています。

両側に配された花道と共に、それぞれの館での話が交互に進みます。この時、義太夫も両側に配されて交互に語りが入ります。効果的な舞台空間になっています。

川の中ほどの段になったところは、水の絵のセットが回り、緩やかに流れる様子を表しています。アナログな感じが歌舞伎っぽくていいですね。

対立関係にあった両家ですが、親同士が相手の子の行く末を思うことで悲劇の結末へ向かいます。恋仲の息子と娘が結ばれたのは命亡き後となる悲しい結末です。この吉野川は約2時間の長丁場です。

切腹に違和感

切腹のイラスト
玉三郎様はさすがの気品、娘を想い悩む姿、娘に手をかけた後の悲しみと覚悟をきめ細やかに演じてくれました。

左近は本格的な女形は初めてとのことでした。顔立ち、きれいな目元が役の雛鳥とマッチしていると感じましたが、発声が今ひとつかな?と感じてしまいました。今後に期待です。

松緑さんは相変わらずの目力です。染五郎の久我之助はやや硬めでしたが、雛鳥の首を確認してからの頬を伝う一筋の涙が美しかったです。

歌舞伎は武士の台頭以後の話が多いですが、今回は飛鳥時代の話。武士階級というものが確立されていなかったこの時代に、切腹?と疑問を持ちました。調べてみると切腹が最初に行われたのは数百年後の平安後期のことのようです。歌舞伎は時代や設定が物語ごとに変わりますが、ここだけはさすがに違和感を感じてしまいました。

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