ステキなお客様⑯初添乗から亡くなるまで~その1~

怖そうなお客様 

私の海外添乗デビューの時のことです。添乗デビューと言っても、自分でも3回目の海外旅行でした。不安を隠しながら空港で受付をしていると、なんとも怖~い雰囲気のオバサマがやって来ました。

このお客様をAさんとします。この時70歳位でしたが、金髪に染めたクルクルパーマです。あきらかにフツーのオバサマではないクセ強オーラをたたえていました。更に私をビビらせたのは、ある外資系航空会社の支店長がAさんに挨拶にやって来たのです。その航空会社にとってのVIPなのだと理解しました。

初日の行程は、現地の空港でバスに乗り込んで、半日観光してからホテルでの食事という流れでした。何とか上手くやっているつもりでしたが、慣れている方には自分の経験が浅いことをすぐに見抜かれてしまっているだろうと心配でした。

「わかっている人」でした

夕食が始まって間もなく、「お肉が固いわね~」という話題が参加者の中で始まりました。高級和牛と違い、確かになかなかの歯ごたえのあるお肉です。するとAさんが「ツアーの食事でそんなに良い肉が出るわけないでしょう、日本じゃないんだから」と大きな声で言い放ちました。

皆さん一瞬驚いた様子でしたが、「そうよね~、仕方がないわよね~」という雰囲気に落ち着きました。添乗員である私は、「日本とお肉のタイプが違いますね、スミマセン」などと曖昧な言い訳をして苦笑いするしかありませんでした。

すると、Aさんが「ここでシュニッツェル作ってもらえるか聞いて」と言ってきました。シュニッツェルとは、ヨーロッパで広く食べられているカツレツのことです。10分程待って、シュニッツェルが出てきました。「なかなか美味しいよ!」と喜んで食べていました。追加料金はもちろん支払っていました。ツアーというものの料金の仕組みを解っている方なんだと思いました。だから文句を言わず、食べたいものは追加で注文しても食べるというスタンスのようでした。周りのツアー参加の皆さんもすっかり、Aさんの様子に巻き込まれていました。

無事に終えた後に

初添乗(私の3回目の海外旅行)を無事に終え、何とか帰国することができました。Aさんのおかげか(?)食事に対する不満意見もなく、終えることができました。

Aさんからは、一生懸命で親切で英語が上手という評価をいただきました。英語についての評価は自分でも疑わしいと思いましたが、そう思っていただけたのなら有難いことでした。

駆け出しの私には充分すぎる評価をしていただき感謝しました。未熟な部分は一生懸命さで補い、その後も1本1本のツアーに取り組んでいきました。

翌年、Aさんから思わぬメッセージをいただきました。これが旅行会社の担当の方から告げられて、自分でも大変ビックリするものでした。~次回、ステキなお客様⑯初添乗から亡くなるまで~その2~に続きます~

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