梅枝から時蔵へ~涙の襲名披露

6月歌舞伎初日の正面玄関
6月の歌舞伎座は

中村萬壽・時蔵・梅枝、3代の襲名披露公演が華やかに幕を開けました。たまたま休日になったので、私としては珍しく初日にチケットをとりました。

初日の昼の部ですから、各関係者も一堂に揃い、歌舞伎座周辺は華やかなお祝いムードに包まれていました。

歌舞伎座ロビーに入って雰囲気を楽しんでいると、尾上丑之助君がお母さん、2人の妹と共にやって来ました。歌舞伎ファンで賑やかなロビーなのに、意外に誰も気がつかないもので、この御一行を気にかける人は見当たりませんでした。本日最初の「上州土産百両首」にお父さんの菊之助が出るのを見に来たようでした。1階の最後列で並んで観ていましたが、次の「義経千本桜」では姿が無くなっていました。

播磨屋、萬屋記者会見

3代同時襲名披露

さて、本日の昼の部のメインは3つ目の狂言「妹背山婦女庭訓」(いもせやまおんなていきん)です。私にとっても、仁左衛門様が出るので今日のメインです。

愛しい藤原淡海(萬壽)を追ってやってきた杉酒屋の娘お三輪(時蔵)でしたが、途中で見失ってしまい途方にくれています。そこで、娘のおひろ(梅枝)を伴って通りがかった豆腐買いおむら(仁左衛門)に行方を尋ねます。珍しく女形姿の仁左衛門様です。永遠に「イイ男」の仁左衛門様ですが、女形姿は残念ながら今ひとつでした。まあ、後から出てくる獅童の女形の酷さににはかないませんでしたが。。。

片岡仁左衛門
劇中ではありますが、このタイミングで襲名披露口上が行われます。仁左衛門様をはさんで上手に新・時蔵、下手に新・梅枝。仁左衛門様の「6代目さんは古風な芸風の持ち主。ゆくゆくは歌舞伎会を背負って立つ女形になります」と語れば、時蔵が「芸道に精進する覚悟」と挨拶。次に仁左衛門様が、梅枝について「3代の中でも一番の芝居好き」と褒めました。

時蔵の涙

この時、時蔵はずっと両手をついて頭を下げていたのですが、舞台にボタボタと涙が落ちるのが見えました。ここまでの苦労と、喜びと、これからの責任感と、たくさんの感情が一気に溢れたのではないでしょうか?初日に来てよかったな、と思えた感動的な瞬間でした。顔をあげた後も、少々泣き顔になっているのがわかりましたが、すぐに次のお芝居が始まります。心配しましたが、そこはプロ。すぐにしっかりした芝居の顔に戻りました。
時蔵の阿古屋

新・時蔵は梅枝時代に玉三郎から女形の最高峰の役「阿古屋」を指名されて演じています。実力は玉三郎の折り紙付きです。

これまでも、可憐で品のある役の良く似合うステキな女形さんと思っていましたが、今後もますます応援したくなりました。



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