とんでもお客様⑲東京大学‐その2

ツアー参加者の要注意人物

打ち合わせをする人たちのイラスト
ツアー出発前の打ち合わせでは、行程や手配についてだけでなく、参加するお客様についてのデータも確認しています。

例えば食物アレルギーがあるとか、持病について、足が悪くてゆっくり行動する、耳が悪いので大きめの声で話しかけてほしい、などなど。ツアー中、添乗員が気配り、目配りが必要な項目です。

また、ご本人の性格などで注意が必要な場合も、申し送りがあります。大きな声でツアーやツアー参加者の悪口を言う、お酒を飲みすぎて周りからクレーム、わがままな要求が多い、集合時間を守らない、などなど。これらは主に、他の方へ迷惑がかかった場合に知らされる項目で、こちらも折に触れ、他の参加者との間に問題がないように注意が必要です。

小学校の先生だった

ある時、不思議な申し送りがありました。ツアー参加者が「常に教師だったことを主張してくる」というものでした。詳しく聞いてみると、元小学校の教員だった70歳代の姉妹で、何かというと「私たちは学校の教師だった」と言ってきて「威張る」というのです。

バスツアーのイラスト
このため、ツアーが始まるとすぐに他の参加者から疎まれて、誰も近づかなくなるようです。誰も近づかなくなった後は、添乗員しか話し相手がいなくなるので、常に独占しようとして添乗員の業務に支障が出るほどらしいのです。

実際にツアーが始まってみると、予想通りの展開になりました。姉妹2人で口を開けば「教師だった」と言って高圧的にふるまっていました。他の参加者があっという間に2人を避け始めたのが判りました。食事の時に彼女たちとテーブルを囲むのは添乗員の私しかいなくなりました。

教え子には東大生が

失礼ながら「仕方がなく」私が一緒に食事をしている時も、教師だった話をずっとしています。私の学生時代にも多くの素敵な先生にお世話になり、感謝する気持ちが強いので、そういった話をしながら過ごしていました。また、「私にもひとり小学校の教師をしている友人がいます」と、話を合わせようとした時のことでした。次に言われた言葉があまりにもビックリする一言でした。
教師のイラスト

「私の教え子にはね、東大生もいるのよ!」とお姉さんが言ったのです。私は、「素晴らしい実績をお持ちなんですね~」と咄嗟に感心して見せることを忘れませんでした。

しかし心の中では「!!!」でした。同時に少々意地悪な質問が頭をよぎってしまいました。「刑務所には何人入っているんですか?」と。

定年まで40年近く小学校で教えたのであれば、2人や3人が東大に入ることは確率的にも当然のことでしょう。優秀な先生でなくても、やる気のない先生でも、続けていればいわゆる「出来の良い」生徒はいるでしょうし、小学校の先生が良かったというだけで東京大学に入ったわけではないでしょう。

逆に、どんなに素晴らしい先生の教え子でも、その後の人生で間違って犯罪を犯し、刑務所に入った人もいることでしょう。それは小学校の先生のせいではありません。東大生を送り出したことを誇りに思う気持ちは理解できますが、東大に入らなかった生徒のことはどうでもよいというように聞こえてしまいました。

私が大好きだった先生がこんな人でなかったことを信じています。

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