添乗員のグチ⑫隣の席は仏様

御骨のイラスト
飛行機の中で

ツアー添乗の最終日のことでした。飛行機の席に着くと、1席おいた隣に初老の男性が座りました。私が真ん中3席の右の通路側、その人は左の通路側でした。3席の真ん中は結局誰も来ず、空席のようでした。

その人の手には、荼毘に付されたお骨がありました。納骨に行くのか不明でしたが、私は遺骨に向かって目礼をしました。その方は沈んだ様子でしたので、私も特に話かけることもなく、シートベルトを締めて離陸を待っていました。

CAさんの心配り?

しばらくすると、出発に向けての最終確認のため、CA(キャビンアテンダント)さんが機内を周ってきました。そしてその男性に声をかけたのです。「持ったままではお疲れでしょう。隣においてシートベルトで固定しましょうか?」と。
飛行機の席のイラスト

すると、その人も、「あ、ありがとうございます。お願いします」と返事をしたのです。
CAさんはお骨を私の隣の席に置いて、シートベルトで固定し、去っていきました。

ここまで読んで、皆さんは「さすがCAさん、気が利く」と考えますか?もし私同じ立場だったら、国内線の短いフライトなら、「お骨はずっと膝の上で良いです」と断ったと思います。シートベルトを締めるのに邪魔にもなりませんし、何より私なら、隣の席の人のことを考えます。

私は、お骨を持っていた人を批判するつもりはありません。お疲れであれば、CAさんの申し出を素直に有難く思ったことでしょう。

モヤモヤする女性のイラスト
私の気持ちは?

残念だったのは、CAさんの心配りの中に、私の存在が無かったことです。私は遺骨なら「怖い」などと思いません。実際、隣の席に置かれても「まあ、仕方ない」と考えました。でも、決して気分の良いものではありませんでした。同じ事なら、その男性を私の隣にして、お骨は座っていた席にしてほしかったです。

なぜ一言、先に私の気持ちを聞いていたけなかったのでしょう。反対側の通路から小さな声で私に許可を取ることはできたはずです。前もってなら「嫌だ」と言えても、お骨を置かれてしまった後からは、大変言い出しずらい状況です。

日本のCAさんは世界レベルで素晴らしいことは、自分の体験でもわかっています。しかし、ごくまれに”添乗員”はお客様扱いしていないと態度で感じるCAさんもいます。この時どうだったのかは不明ですが、素晴らしい気配りの1ミリでも、私に向けてほしかったと残念に思いました。

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