十二月大歌舞伎「天守物語」

天守物語とは

十二月大歌舞伎公演演目
十二月も早速、歌舞伎に行ってきました。今月は3部制です。私はもちろん、夜の部の「天守物語」が目当てです。

「天守物語」とは。。。
姫路城天守閣五重。天守閣の最上階は異形の者たちが棲む人の通わぬ別世界。主である天守夫人富姫が簑を付けて雲に乗って帰ってくる。
ほどなく猪苗代から富姫の妹分の亀姫一行が到着。亀姫が土産に持ってきた品は、播磨守と瓜二つの兄弟亀ヶ城の主・武田衛門之介の生首だった。人間の生首は、異形の者たちにとってのごちそうです。嬉しい再会の手土産に、富姫は亀姫が気に入った鷹を捕らえ、持たせます。
静まりかえった天守に、一人の武士、姫川図書之助が階段を上がってやってきます。殿様の鷹を失った罪で切腹を申しつけられたが、鷹の行方を見届けることを条件に猶予を与えられたと語ります。富姫は図書之助の清々しさに心を打たれ、ここは人間を生かしては帰さない場所であるが、この度だけは許すとして図書之介を帰します。
戻る途中で妖かしに雪洞の灯を消された図書之助が、再び五重に戻ってきます。闇の中で梯子を踏み外し男の面目を失うよりは、富姫に命を取られようとも、再び灯をもらいに来たと答えます。富姫はその詞に感銘を受け、深く心をひかれる。そして鷹は自分が奪ったものだと明かし、筋道の通らない人間世界に帰したくないと引き留めるが、図書之助の迷いを見て、ここへ来た証拠にと秘蔵の兜を持たせて帰しました。
下界へ戻った図書之助はお家の重宝の兜を盗み出したと疑われ、追いたてられて三度天守五重へやってくる。富姫は共に生きようと言い、二人は獅子頭の母衣(ほろ)に身を隠す。やがて追っ手が迫り、獅子が両目を刺されると、富姫、図書之助をはじめ天守の世界の生きる物は皆、失明し闇に迷う。二人がもはやこれまでと共に死のうとするところへ、獅子頭を彫った工人近江之丞桃六がどこからともなく現れ、獅子の目に鑿(のみ)を当てる。二人は光を取り戻し、睦まじく抱き合う。
平成中村座・姫路城

8か月ぶりの歌舞伎座

      玉三郎様が歌舞伎座の本公演に出るのは8カ月ぶりだそうです。私は、地元で開催された「素踊りとトークショー」、「熱海座・舞踊公演」にも行ったので、そんなに間が空いていたとは気がつきませんでした。

      天守物語
      「天守物語」と言えば玉三郎様の独壇場といったイメージですが、今年の「平成中村座・姫路公演」では玉三郎様が演出し、七之助君が富姫を初役で好演しました。今回の歌舞伎座は七之助君の富姫、玉三郎様が演出と亀姫役という、ファン必見の演目となりました。

      前半の(私の)見どころは、七之助、玉三郎が並んで久しぶりの再会を喜ぶシーンです。今回の私の席は前から三列目の中央。目が合うのではないかと思うほど、二人がすぐ近くの正面にいます。文字通りの眼福のひと時でした。

      妹に見えるのです

      ここでの私の注目は、実年齢で30歳以上離れている玉三郎様が、富姫の妹分の役ということです。

      3列目から見ているので、70歳を過ぎた玉三郎様のゆるみ、たるみは見えてしまいます。それなのに、富姫を尊敬し、慕っている様子で妹分に見えるのです。七之助君の直線的な輪郭と、玉三郎様の丸みのある輪郭が効いているのかもしれませんが、演技力の成せるところでしょう。

      後半は図書之助が人間社会の主従関係に翻弄され、苦しむ姿が描かれます。現代の私たち社会にも通じる不条理です。

      出色だったのは、勘九郎君演じる舌長姥と近江之丞桃六の二役です。元々芸達者な勘九郎君ですが、観客を楽しませる様子は父・勘三郎を彷彿とさせました。来年二月は十三回忌追善興行だそうです。急死したショックが昨日のように思い出されますが、もうそんなに経ったのですね。

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