とんでもお客様⑮オレはいいんだよ!

シートベルトに関するチラシ
 シートベルトを締めて下さい

今や常識中の常識となった自動車のシートベルト着装。観光ツアーのバスにおいても、全席でシートベルト着用が義務付けられています。例外は、妊婦さんや病気やけが等の事情がある方です。

添乗員も走行中はシートベルトを締めて業務をするよう旅行会社から指示されています。例えば、お客様が体調不良や、急用で呼ばれた時以外は、着席してシートベルトを締めています。

ツアーの最初にご挨拶と自己紹介をした後は、「添乗員も着席してシートベルトを着装してのご案内をさせていただきます」と、アナウンスしています。今やお客様にとっても、そんなことは常識になっています。

例外はバスガイドさんです。バスガイドのシートベルト着用については、バス会社、都道府県等、色々な基準があるようです。特に「安全確認業務」を負っているので、「必ず全行程座ってシートベルト」ということにはならないようです。現状を見ていると、一般道では立ってご案内する人もありますが、特に高速道路では着席し、シートベルト着用しての案内がほとんどです。

俺はいいんだよ!

観光バスのシート
あるツアーで、お客様から「バスの席を前にしてほしい」という要望がありました。バスの座席は日毎に変えますし、ご高齢の方だったので「では、明日は前にしますね」と返事をしました。

翌日お約束通り、そのご夫婦を前の席にしたところ、困ったことになりました。ホテル出発時に、「では、安全のためシートベルトをお締めください」と言ったのに、その方だけ、シートベルトをしていないのです。

その方ひとりだけでしたが、再度「安全のためご協力ください」とマイクで呼びかけました。それでも聞こえないのか?無視しているのか?まったくシートベルトをする気配がありません。

「すみませんが、バスが出発できないのでシートベルトをしていただけませんか?」と声をかけましたが、「うん」と返事はあったものの、まったく動きがありません。ということは、昨日もきっと後方の席で、添乗員の目が届かないのをいいことにシートベルトをしていなかったはずです。

少々恰幅の良い方でしたから、シートベルトがきつく感じることはあると思いますが、最前列の席で「じゃ、しなくてもいいですよ」とは言えませんでした。もし、しなくて良いと言ったら、他の人もしなくなりますから。

困っている女性のイラスト
仕方がないので、私がシートベルトを引いてお手伝いしようとしたところ、この方から驚愕の一言が発せられました。「オレはいいんだよ!」と。

後ろの席に移動してもらいました

どういうこと?自分だけいいって、そんな道理は通りません。自分から「前方の席に座りたい」と言ってきたので、ご希望通りにしましたが、後ろの席に移動していただきました。やむを得ない急ブレーキなど何かあったら一番危険なのは前方の席の方ですから。

高額ツアーでしたから、企業の上層部だった方や会社経営の方などが多くいらっしゃいます。「自分がルールブック」だった方なのかもしれませんが、ツアーに参加した以上は個人の立場は関係ありません。

また、添乗員がお願いする安全へのご協力をいただけない場合、今後ツアー参加をお断りするかも知れませんとお話ししました。ツアー終了後、この方については会社に報告しました。その後「前方席不可」「シートベルトに関するお約束の上参加」「参加お断り」等の案件になったようです。隣の席で奥様が困ったような、恥ずかしそうな顔をしていたことに同情しました。

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