ステキなお客様⑬通(つう)なお客様

通(つう)なお客様

どこに行くにも、自分より詳しい方というのはいるものです。

ザルツブルグ音楽祭
ザルツブルグ音楽祭のツアーでは、皆様がクラシック通でした。高額な音楽祭のツアーに来るくらいですから当然ですね。観光も、普段とは一味違うディープなものでした。現地ガイドも特に詳しい方に来ていただきましたが、そのガイドさんも舌を巻くほどの方もいました。私もクラシック音楽は大好きですが、まったく追いつけないほどの知識の方ばかりでした。

国内の城めぐりツアーに行った時も、「マニア」のお客様が沢山参加していました。城の「縄張り」が好きな方、「石積み」が好きな方、「天守」が好きな方と色々でした。こんな時、添乗員だから「知っていなければ」と私が一夜漬けで勉強したところで、まったく追いつくものではありません。

竹田城
添乗員は何でも知っている?

ツアーの担当になると、「その方面の知識に詳しいから」と思われがちですが、そんなことはありません。

私は歌舞伎が大好きでよく観に行きます。歌舞伎関連のツアーに行った時も、他の専門ツアーよりは話ができましたが、それでもミーハーな私よりよほど詳しい方が多くいますし、本格的に日本舞踊や、楽器の知識を持っている方は大勢いました。

花や植物が好きな方、歴史が好きな方、乗り物に詳しい方、数え上げたらキリがありません。城めぐりツアーの時も、「添乗員さんも城好き」「城マニア」とカン違いされそうなので、最初の頃はどうしようか困っていましたが、だんだんわかってきたことがあります。

「教えて下さい」という素直さ

レブンアツモリソウ
こんな時は、良い意味で開き直って「教えて下さい」というスタンスでいるのが一番なのです。ツアーの最初に「この機会に皆様に色々教えていただくのを楽しみにしています」と挨拶をしています。

詳しい方って、実は「教えたがり」「話したがり」の方が多いのです。私が中途半端な知識であれこれ話すより、お客様に話していただいた方が、お客様は楽しいのです。

添乗員は、ツアー行程をスムーズに進めるのが仕事です。詳しいほうがもちろん望ましいですが、全員が添乗員に知識を求めているわけではないのです。お客様の様子を見て、補佐をすれば良いのです。明るく「写真お撮りしましょうか?」と声をかけていれば喜んでもらえるのです。

ツアーの後に

オーストリア皇妃エリザベート
色々話していただいたことが大変楽しかったり、勉強になることが今までに沢山ありました。ツアーという短い期間のお付き合いですが、少しでも心に残る時間になればと考えています。

ツアーが終わって少し経ってから、沢山写真を撮っていたお客様からツアーの写真集が送られてくることがあります。きちんと製本されていることもあり、驚かされます。絵葉書やお礼の手紙をいただくことも良くあります。

あるお客様は、ミュージカルの「エリザベート」の観劇に誘ってくださいました。だいぶ年上で社会的な地位もある方ですから、ヘンな下心はないと思いましたので、お誘いを受けました。そのお客様が私を誘った理由は、「オーストリアに行ったことがある人とエリザベートの話をしないとつまらないじゃない」とのことでした。大変ありがたいことです。

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