あまりの仲の良さに
あまりの仲の良さに「新婚さんみたいですね~」と声をかけると、「私たちまだ2年目の新婚なのよ」と答えが返ってきました。
ご夫妻はこの時で60歳代半ばでした。それぞれに以前の配偶者を失くして、子供も独立していました。趣味のサークルで知り合い、お互いの人柄に好意をもち、交際が始まったとのことでした。
このような話のやり取りから、ご夫婦の奇跡のような話を聞くことができました。
「これ、私よ」
一緒に生活するようになったある日のこと。ご主人のアルバムを二人で見ていた時、奥様の目に1枚の写真が飛び込んできました。古い写真で、若い女性の後ろ姿を映したものでした。
ご主人に聞いてみると、旅先で知り合った人の後ろ姿を映しただけで、何となく持っていたということでした。今と違って、昔は1枚1枚フィルムで撮り、お金をかけて現像してもらうものでしたから、捨てずに取ってあった写真でした。
この写真を見た奥様が放った衝撃の一言に、ご主人もビックリしたのだそうです。
「これ、私よ!」
1日だけ一緒にいたあの人
二人は昔、お互いがひとり旅の途中で会っていたのです。今と違って観光地と言ってもそれほど交通の便が良くなかったそうで、たまたま乗り合わせたバスに旅行者らしき女性がいたので、ご主人から話しかけたそうでした。行先が同じということがわかり、「じゃ、一緒に行きましょう」ということになったそうです。
田舎の観光地で数時間一緒に過ごした後、それぞれの次の目的地に向かいました。お互いに名前も聞かなかったそうです。
その数時間の間、ご主人は趣味のカメラで、その女性が景色を眺めている後ろ姿を何気なく写真に収めていたのでした。
40年の時を経て
そうです。二人は40数年前にひとり旅の途中に出会っていたのです。ほんの数時間を一緒に過ごし、名前も聞くことなく別れた2人が、今や夫婦となっていたのです。ご主人が写真を処分していたら、今でも気付かなかったかもしれません。
こんな奇跡のような話を聞くことができて、私の心が幸せな気持ちで満たされました。気がつくと二人の笑顔に見守られながら、私一人が泣いていました。
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