目の前にいきなり
彼は間違いなく私のツアーのお客様でした。お母さんと2人で、ペルーに行くツアーに参加してきたのです。年齢は20歳でした。
人は見かけによらないとは言いますが、見た目が怖いと、他のお客様にも影響がありました。再集合して、出国から機内での注意事項、現地空港での集合場所などの案内をしたのですが、私の話はうわの空の人が多かった様子でした。皆さま、「あの人も一緒なの?」という不安を隠しきれない顔がほとんどでした。
見かけによらずでした
現地でのツアーが始まってみると、心配は全く杞憂だったことがわかりました。彼は実際に大変優しい青年だったからです。彼本人の人柄と、お母さんの育て方も良かったのでしょう。話し方も態度も落ち着いていていますし、ツアーの年配者の荷物を持ってあげたりして、交流が進んでいました。
食事で同じテーブルになった人たちは、髪形について質問したりして徐々に打ち解け、途中からは○○君と呼んで楽しそうにしていました。
彼のおかげでかえって皆さんの交流が盛んになり、楽しく思い出に残るツアーになりました。
帰国の空港で
しかし、見かけが見かけなので心配でした。通常税関の係員が団体ツアーのお客様の荷物を開けて調べることはありません。○○君には、ツアー中は強制しなかったツアーバッジを胸にしっかり付けてもらい、必ずお母さんと一緒に税関審査台に行くようにアドバイスしました。
ターンテーブルから荷物を引取り、○○君とお母さんが税関を無事通過するまで、他の参加者も息をつめて見守ってしまいました。2人が税関をノーチェックで通過し、その先の自動ドアを出た時は皆で手を振って見送る形になりました。「あ~、良かったね~」と、皆様心配いただいたようでした。
ツアーで一番年配だった女性のお客様は、「なんだか、やさしい孫と旅行したようで嬉しかったです」と言いながら帰っていきました。彼は今、どうしているでしょうか?忘れられないお客様です。
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