日本人の質問㉔オジサンのアルバイト

パリのカフェで 

カフェ・ドゥ・フロール
楽しい海外旅行。「花の都パリ」は特に胸が躍りますね。私も添乗員になってから、何十回も行きましたが、その都度華やかな気持ちになるものです。

あるツアーでパリの観光中に、お客様からこんな質問がありました。
「なぜ、いい年したオジサンが喫茶店でアルバイトしているの?」

えぇ~~~(+_+)
ビックリしてしまいました。確かに日本の喫茶店では「ウエイトレス」と呼ばれるサービススタッフの多くが、学生、特に女性のアルバイトであることが多いです。これもスタバやドトールなどのコーヒーチェンが一般的になった現在では、あまり見なくなりましたね。

オジサンのアルバイトがいっぱい?

ツアーのお客様の年代(50後半代~80代前半がメイン)のイメージでは、パリのカフェも「喫茶店」なのでしょう。

確かに通り沿いの席でコーヒーを飲んでいる人が多いですが、奥のカウンターではお酒も出しますし、料理で有名な店も多いのです。老舗のカフェは、かつての文化人の交流の場所となり、パリの文化の最先端の舞台ともなっていました。

ギャルソンのイメージイラスト
カフェ・フーケ、レ・ドゥ・マゴなんて、初めてバスから見ただけでも私には大興奮ものでした。私はドゥ・マゴの渋谷の支店にも行ったことがありますが、現地の本物は意味が違います。

そんな店で働いているギャルソンを、日本人のお客様が学生アルバイトと同じレベルで語ったことが私には本当に残念でなりませんでした。確かに「いい年したオジサン」が多くいます。

それはギャルソンが専門職だからです。職業訓練学校を出た人もいるかもしれません。店で一から修行した人もいるかもしれません。私たちが名前を知るような有名カフェのギャルソンは、サービス業のプロフェッショナルとして憧れと尊敬の対象でもあり、店の顔としての価値もあるのです。

契約は店ごとに違うでしょうが、ギャルソンは担当テーブルを受け持ち、その客の注文した金額の15%とチップが収入になるというようなパターンが多かったようです。近年、この収入形態を見直す動きもあるようですが、かつては自分のサービスひとつで客を満足させ、収入を得ていたようです。一流店で売上成績が悪ければ解雇されることもあるようです。

お得意様であれば、コーヒーの好み、砂糖の好み、タバコを吸う時にどこに灰皿を置くか、ワインや料理の好みまで把握して、気持ちよく過ごせるようにスマートにサービスをするのです。料理やお酒の知識も不可欠ですから、勉強が常に必要です。

大きなニュースになりました

日本人ギャルソンの山下氏
そんな厳しいギャルソンの仕事について、日本で大きなニュースになったことがありました。

サンジェルマン地区に超有名カフェ「カフェ・ドゥ・フロール」があります。アポリネール、ジャン・コクトー、サティ、カミュ、サルトル&ボーヴォワール、ヘミングウェイ、ジバンシィ、サン・ローランと、きりがないほど、その時代ごとのパリの有名人も通い詰めた老舗カフェです。

そのカフェ・フロールに初めて「フランス人以外」の常勤のギャルソンが2015年に誕生しました。日本人の山下哲也氏です。外国人に老舗カフェのギャルソンが務まるのか?という偏見も当初はあったようですが、非常勤としての2年間を経ての常勤ですから、その働きぶりが評価されたのでしょう。現在はパリのカフェ文化、フランス文化の伝道者としても多方面で活躍されているようです。

お客様の「おじさんのアルバイト」発言を聞いてからというもの、カフェのギャルソンについてはツアーのバス内で毎回話題にしていましたが、山下氏のニュースの後は、特に話が盛り上がるようになりました。誇らしいことですね。

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