監獄ホテル

モスクワ乗り継ぎで 

モスクワの風景
現在では、72時間以内の乗り継ぎにはビザは必要なくなったそうですので、昔話としてお読みください。

成田空港からモスクワを経由してイスタンブールに行ったことがあります。

モスクワで乗り継ぎのため1泊するのですが、ビザなしのため、空港から航空会社のスタッフの誘導に従い、バスでトランシットホテルに行き1泊。翌日また、バスに乗って空港に行き、次の便に乗るだけです。

降り立ったモスクワ・シェレメチボ空港で、私がツアーのお客様を集めてこの後の流れを説明していると、不安顔の個人旅行の学生さんたちまで集まってきました。海外の空港でよくある風景です。不安なのです。どこかの添乗員が説明しているから、一緒に居れば安心といったところでしょう。

鉄格子のある風景
監獄ホテルへ

バスで連れて行かれたホテルは、廊下の両側に客室のドアが並ぶ、一見普通のホテルでした。ひとつ大きく違っていたことは、エレベーターを降りて廊下に入る所に鉄格子と見張り係のデスクがあることでした。何だか刑務所に入ったような不思議な気持ちになりました。

私たちにはロシア入国に必要なビザがありませんから、ここから1歩たりとも出ることができず、見張られているということでしょう。日本人でそこまでしてロシアに逃げたいと思う人がいるとも思えませんが、当時のその国のやり方ですから、仕方がありません。

部屋には必要最低限度のものが置かれているだけです。ただ寝るだけですから、それでよかったのです。タオルはバスタオル1枚だけでした。
私は、いたずら心と好奇心には勝てませんでした。添乗員という身分をフル活用しようと思いました。
ホテルの部屋

鉄格子まで行き、「フロントに聞きたいことがあるから、ここから出してほしい」と言ってみました。すると、あっさりOKと言って出してくれたのです。

当然ダメだと思っていたのに、あまりに簡単に出してもらえたので戸惑ってしまいました。もとより用事は無かったので、ロビーに行って行き交う人やインテリアなどを眺めていたら、「何をしているんだ、もういいだろう」と話しかけてくる人がいました。

そうです。鉄格子から出た時点から「見張り」がついていたのです。自分がスパイにでもなったような気分になりました。要注意人物になってしまったかもと心配しましたが、その後も何度も問題なく入国できていますので、大丈夫だったようです。いずれにしても、こんな「小物」にいちいちかまっていられないですよね。

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