楽しい時にこそ
「荷物は自分の視界の範囲に置いてください。椅子の背もたれや、テーブルの下に置くことは厳禁です。相手はプロなのです。ほんの数秒で盗られます。油断しないでくださいね」と、何度言ったことでしょう。
夕食のレストランでも、席に座ったとたん、バッグをテーブルの下に置いていたので、「面倒でも、ご自分の見える範囲に置いて下さいね」と声をかけました。
楽しく会話をしている時に、いちいち注意をされて不愉快だったのでしょう。4人そろって私を睨みつけてきました。私がテーブルを離れるタイミングで背中越しに、「ホントに口うるさい添乗員だよね~」としっかり聞こえるように言われました。
10分もしないうちに
私が席について食事を始めて間もなく、「あれっ!」と声があがりました。例の女性グループです。
どうしたのか?と様子をうかがっていると、テーブルの下を覗き込んでいます。「まさか」と思ったら、そのまさかでした。
「添乗員さん、バッグがないんだけど」私は、「どこに置いたんですか?」と確認しました。やはり、テーブルの下にあったバッグがないというのです。
よく見ると、彼女たちの席は階段の横でした。階段手すりのすき間から手を出せば、バッグを盗める位置だったのです。
探しに行きましたが
まだそんなに時間が経っていないこと、パスポートというよりお金が狙われた可能性が高い国だったので、バッグが近くに捨てられているのではと私は考えました。
レストランはホテルから徒歩3分の場所だったので、他のお客様には各自でお帰り頂き、バッグを盗られたお客様と警察署へ行きました。
盗難届を提出し、書類をもらう間、お客様は「あんなに注意してくれたのにすみません」とずっと言っています。さっきまで私を睨みつけ、聞こえよがしに文句を言っていたので、私も腹が立っていましたが、一番の被害者を責めても仕方がありません。
一番の目的だったのに
翌日、その方は数時間走った町の日本領事館前で待機してもらった現地スタッフと共に、手続きに入りました。その日はスタッフが用意したホテルで過ごし、翌日合流することになりました。費用はすべて自分で負担しなければなりません。
もっと残念だったのは、その日の観光が、更に数時間走った先での、ツアーの一番のハイライトだったのです。本人は行くことができなかったので、本当に残念でした。
更に、領事館での手続きでは、日本に直行する帰国しかできない書類なので、第3国を経由する本体とは一緒に帰ることができませんでした。最後の宿泊先からは、ひとりで別の空港に行き、帰りの航空券も自腹になったのです。
悲しいことに、「この人は危ない」という勘が結構当たってしまうようになりました。注意されたら、素直に聞いていただけると嬉しいです。起こってしまってからでは遅いのです。
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