ホテルの金庫からお金が盗まれた‼

真冬のスイスは良い天気 

サンモリッツ
1800年代中期、交通が発達するに従い、ヨーロッパ各地から観光客がスイスにやってきました。

交通の発達と共に、スキーをはじめとするウィンタースポーツが普及したことも大きな後押しになりました。また、産業革命で中産階級が増え、旅行が一部の貴族や大金持ちだけのものではなくなった時代でした。

皆様は真冬のスイスは晴天率が高く、観光に適していることをご存知でしょうか?サンモリッツのホテルの支配人が「冬に来て晴れていなかったら、宿泊代を無料にする」とイギリス人と賭けをした話が伝えられています。

真冬に観光ツアー

スイスの温泉スパ
そんな真冬のスイスを満喫するツアーが企画され、添乗したことがありました。

夏のツアーではまず行かない、バート・ラガッツという温泉保養地にも宿泊しました。
大変高額のツアーでしたから、お客様は2組4名のみ。他の日本人観光客に会うこともありませんでした。

ロープウェイで山の展望台の観光にも行きましたが、スキーウェアもスキー板も持っていないのは私たちだけ。他のスキー客たちからは不思議な目で見られました。

事件が起こりました

ホテルのフロントのイラスト
あるリゾート地で、昼間の観光を終えてホテルに戻って少し経った時、お客様から電話がかかってきました。金庫に入れていた現金、アメリカドルで800ドルがなく無くなっているというのです。

実はこの女性のお客様はアメリカの大学で日本語を教えている先生でした。日本在住のご友人と今回ツアーに参加していたのです。普段暮らしているのがアメリカのため、スイス旅行にもかかわらず、米ドルを持ってきていたのです。

昨夜金庫に入れる時に紙幣の枚数を数え、封筒に20ドルは何枚などと、内訳も書いたとのことでした。かなりしっかりした方ですので、間違いはないと思いました。
ホテルの支配人を部屋に呼びました。疑いたくはありませんが、ホテルのスタッフの出来心かもしれません。

盗まれたからくり

なぜホテルの金庫に入れていたお金が無くなったのでしょう?フロントの人の話では、昼間にこの部屋から電話があり、アジア系の男が「金庫の暗証番号を忘れたから開けてほしい」と言ったので、開けたとのこと。
その少し前に、フロントでアジア系の男がこの部屋番号を言ってきたので、ルームキーを渡したということもわかりました。しかし、私たちはお客様4名と、添乗員1名、全員が女性でした。
スイスの小さなリゾート地の小さな5つ星ホテルです。フロントスタッフが何の疑問も持たず、名前も確認せずにそのアジア系の男に鍵を渡してしまったことは、高級ホテルとは思えない失態です。

鑑識の警察官のイラスト
真冬の5つ星ホテルに日本人の観光客がいて目立ったのかもしれません。出入りする様子や、部屋の位置等で部屋番号を確認したのでしょう。犯罪者に狙われたことはたいへん残念ですが、ホテルのスタッフの話を聞く限り、スタッフの対応が間違っていることは明白でした。

警察を呼びました

盗難事件として地元の警察に来てもらいました。アメリカ在住のお客様なので、お金についての質問にはご自身で答えていました。
部屋のドアノブや金庫など、犯人が触ったであろう場所は、指紋採取がされました。
私たちが1日どこで何をしていたのかは、英語の手配行程表を見せながら、私が詳細に話しました。まるで刑事ドラマの中にいるようでした。

お客様はカテゴリーが上の部屋に移っていただき、その夜を過ごすことになりました。
お金は金庫に保険がかかっているとのことで、全額返金されることになりました。しかし、そこはスイスです。スイスフランで800米ドル分をもらっても、また両替しなければなりません。手数料で目減りしてしまうことは明らかです。

日本なら、菓子折りのひとつも渡してお詫びといったところですが、スイスなので何もありません。ホテルの支配人がしっかり謝っているのと、海外暮らしでドライな感覚をお持ちのお客様だったので、それで終わりになりました。

私にとっては、警察を呼び、指紋採取までするというなかなかできない体験だったことで、忘れられない思い出になっています。

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