添乗先でのできごと
ツアーメンバーの若い方にも手伝っていただき、やっと設置ができた頃、隣に後輩添乗員がやってきました。名前は知りませんでしたが、顔は見たことがある添乗員でした。
そのツアーは年配客が多く、シートを広げる作業は私の時より大変そうでした。私は早速その添乗員にお客様を少し離れた場所に待機させることを指示し、一緒にシートを広げるのを手伝いました。
「本当にありがとうございました」と感謝されました。このことは、会社にもその添乗員が話をしたようで、後から「率先して後輩を助ける先輩」という称号をいただきました。
「自分が偉い」と自慢したいのではありません。私にはステキな見本となる先輩がいたのです。
少し苦手だった先輩がしてくれたこと
初めてのスペイン添乗の時でした。現地の特急列車でその苦手な先輩と偶然同じ列車に乗り合わせました。先輩はセビリアまで,私は先輩より手前のコルドバ駅で下車予定でした。
日本のように車両の高さに合わせたホームではありません。ホームに降りるには数段の小さな階段を降りなければなりません。
停車時間は限られています。人が下車するだけなら問題はないのですが、スーツケースも降ろさなければなりません。年配者の多いツアーですので、お客様に手伝ってもらうことはケガのリスクを考えると避けなければなりませんでした。
まだまだ経験不足の私には、どうしたら良いのか?、ここで初めて困ってしまいました。スーツケースは全部で30個位ありました。乗車した駅はマドリードでしたのでアシスタントのスタッフがポーターを手配し、スーツケースの積み込みまですべて「お任せ」だったのです。
その時,コルドバではポーターがいないと聞いていました。スーツケースを自分で降ろし、バスに乗車し、街中のレストランでランチを食べ、そこで初めて現地ガイドと合流というスケジュールでしたので、手伝ってくれる人はいませんでした。
軽いフットワークの心
先輩が列車の上から、スーツケースをどんどん降ろしてくれました。私もホームで必死に受け取りました。停車時間内に終えることはできませんでしたが、駅員さんも心配そうに見ていてくれたので、安全を確認してから列車は動いて行きました。
先輩は列車から笑顔で手を振ってくれていました。私は先輩に深くお辞儀をしました。その時は必死さばかりでしたが、後からジワジワと、先輩に対するありがたさと尊敬の気持ちが湧いてきました。
何てステキな人でしょう!
「新人添乗員には苦労させておけばいい。自分には関係ない」と思う人だったら、何倍も大変だったはずでした。
心を受け取って
今になってみると、私が受けたのは先輩からのバトン、駅伝なら襷(たすき)だったのです。
今や自分があの先輩の立場です。自分が苦労してきたからこそ、ステキな先輩の見本があるからこそ、困っていそうな人には率先して声をかけ、手を貸そうと思っています。
それが先輩に対する一番のお礼になればと思っています。
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