大向こうのいない世界に

大向うのイラスト

この世界の片隅に 

文字通りこの歌舞伎という世界(劇場)の片隅に確実にあった「大向こう」が無くなって2年が経つ。

当たり前のようにあったものが無くなり、改めてその大きさに気付いたのが「大向こうさん」の力です。

初めて歌舞伎を見に行って、一番驚いたのが大向こうさんの声でした。「えっ、何か叫んでる人がいる。いいの?」という感想でした。

歌舞伎について漠然とした知識しかなかった私にとって、大向こうは一種のカルチャーショックでした。
その掛け声の主なものは次のようなパターンです。
「松島屋」「大和屋」などの屋号。「神谷町」「永田町」など役者の住む町名。その他「○○代目」「日本一」「待ってました」「たっぷり」「大統領」というものまで、さまざまです。

一番印象に残っているのは、18代勘三郎の「お祭り」です。大向こうの「待ってました!」の声に「待っていたとはありがてえ」と答えた姿を思い出すたび、今でも胸が熱くなります。

大向うのイラスト

大向こうのルール

大向こうは勝手に声を出していいというものではありません。大まかに以下のようなルールがあるようです。

① その名前通り、いわゆる3階席からかける。1階席や前方から声をかけることはご法度
② 女性は不可。以前女性の声を聞いたことがるような気もしますが。。。
③ 舞台が無音の時、役者が見栄を切っている時、引っ込みの時など、舞台の信仰の邪魔にならないタイミングで。これは、歌舞伎が解っていないと難しいですよね。

コロナ後の劇場再開で改めて感じました

コロナ禍で歌舞伎座が閉鎖された時の悲しさ、再開して「大向こうさんのいない歌舞伎」を見た時の悲しさは同じものでした。無くなって改めて存在の大きさに気付きました。
歌舞伎と大向こうは離してはいけません。
3階の最前列にして、大向こうを復活できないものでしょうか?
大向こうのいない世界が早く終わりますように。

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