伝説のウェイター

クルーズ船が大好きで

クルーズ船
今はまだまだ行けませんが、私はクルーズ船に乗るのが大好きです。

乗船する時のドキドキ感。船室に入って、荷物を全部クローゼットや洗面台に入れ、カラになったスーツケースをベッド下に入れるときの爽快感。。。

陸上を移動しながらの旅行では味わえないこの感覚が、面倒くさがりな自分にピッタリだと思っています。

ツアーの添乗で何度か同じクルーズ船に乗るうち、スタッフともすっかり仲良くなりました。次回はプライベートでおいで!と言ってくれるスタッフもいたため、すっかりその気になってある時、完全にプライベート&ひとりで出かけてみました。

楽しいメンバーに囲まれて

ツアーではお客様と一緒に食事をしますが、ドリンクやチョイスメニューの注文のお手伝いが必要です。
クルーズ船

時には一人で30人近いお客様を担当するので、テーブルが3~4つに分かれていることも多く、自分が席につけるのは30分くらいたってからということがほとんどです。

クルーズ後半には、皆さまが少しずつ慣れて下さりラクになりますが、自分がいるテーブル以外にも目を配りながらなので、落ち着いて話の輪に集中できないこともありました。

プライベートで行った時、船には日本人らしき人はいませんでした。
ディナーのテーブルは、私以外はアメリカ人夫婦2組、メキシコ人夫婦1組、オーストラリア人夫婦1組、イギリス人女性1人、そして私という10名でした。

最近はクルーズ船のディナーはフレキシブルになり、「エニィタイム・ダイニング」などと言って、固定しない方法がとられていることも多くなりましたが、当時はまだ、完全に固定制で、テーブルもメンバーも毎日同じでした。

1日目は自己紹介から始まりました。ほとんどの人がネイティブの英語圏の人達ですから、会話が早すぎて何を言っているのか判らないこともありました。自分に話しかけられている時は解かるのですが、自分の英語力がまだまだと改めて反省する場面も多くありました。

それでも皆ですっかり仲良くなり、ディナーの後のショーを一緒に見に行ったりと、すっかり連帯感まで生まれていました。

出会ったウェイター・リカルド

ディナーのテーブルを囲むうち、メンバー以外の楽しみが私たちに増えました。私たちのテーブルを担当するイタリア人ウェイターのリカルドです。メニューのチョイスから食事のサービスまで、とにかく手際がよく、私たちに心地よい時間を与えてくれました。
クルーズ船のレストラン

いじりやすかったのか?毎日私を「フジヤマ・レディ」と呼び、私はリカルドをマフィアのように「ドン・リカルド」と呼びました。
そのやり取りが毎日のお約束となり、皆が笑ってくれました。リカルドがいることで、私たちのディナーがより楽しい時間になりました。

最後の日のサービスとは?

ひとりで来ていたイギリス人女性は、少々ふくよかだったため、毎日「No dessert,please」(デザートはいりません)とリカルドに言い続けていました。

最後のディナーの時のことでした。私たちのデザートを配り終えると、リカルドは彼女の前に大きなお皿を置いたのです。びっくりして私たちも皆、「No dessert!」と言いかけたのですが、置かれたお皿を見て、涙を流して笑ってしまう結果となりました。

お皿にはチョコレートのペンを使って、ただ「No dessert,Please」と書いてあったのです。
皆が泣いたのは、あまりにも可笑しかったことと、今日で最後になってしまった楽しい時間を惜しんだからでしょう。

私たちは、船会社に出すアンケートに、リカルドを称賛する言葉をできるだけ書こうと約束をして別れました。

残念な結果に。。。

その2か月後に、再度添乗するツアーで同じ船に乗るチャンスに恵まれました。私はリカルドに会うのを楽しみに、乗船しました。ディナーの時間には、レストランでリカルドを探しました。

すると、リカルドはヘッドウェイターになっていました。ヘッドウェイターとは、レストランに3~4人いるエリアごとの責任者です。つまり、もう私たちのテーブルに料理を持ってきてくれることはないということです。彼の仕事ぶりからは当然のことですが、私たちのアンケートが効いたのでしょうか?

リカルドの昇進は嬉しかったのです。でも、寂しくなりました。気持ちは複雑でした。
私は前回のメンバーに、リカルドが昇進したことを「喜び」としてメールで伝えました。

メンバーのひとりから、「ではもう、彼はレジェンドになったね」という感想が届きました。

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