9・11、現地では

ワールドトレードセンター今昔

あの日から20年

2001年9月11日、私はアメリカにいました。
幸い、ニューヨーク(以後NYと略)ではなく西海岸でしたが、予定通りの旅程や帰国が困難になってしまいました。

あの日は、ラスベガスから空路ロサンゼルスへ向かう行程でした。

ホテルの部屋を出る間際に、テレビには不思議な映像が映されていました。NYのワールドトレードセンター(以後WTC)のツインタワーひとつからから煙が出ている映像でした。

くっきりとした青空に浮かぶ現実離れしたその姿をあまり気にすることもなく、空港に向かう出発時間が迫っていたため、急いで部屋を後にしたのでした。

ラスベガスの空港のチェックインカウンターに到着したとたん、「Airport is now closed」(空港閉鎖です)と言われました。「なぜ?何かあったの?」と尋ねると、「テレビを観なかったの?」という返事。気がつくと、空港内では多くの人が首を寄せ合って、各所にあるテレビを覗き込んでいます。「WTCのこと?何があったの?誰かが何かしたの?」という問いに対する返事に、私は愕然としました。

その答えとは?

「Japanese Red Army did」(日本赤軍がやったんだよ)でした。
チェックイン係が冗談を言ったことはわかったのですが、自分が思ってもいなかった日本人のイメージを言われたのでした。

日本赤軍などの学生運動から過激化した組織が、ハイジャックや爆破事件を起こしたことは、知識としてはありました。しかし、ラスベガスの空港でそんなジョークを言われるなんて、夢にも思っていませんでした。これは、少なくとも世界的な日本人のイメージのひとつとして、テロを起こすというイメージがあるということになります。1995年に起きた「地下鉄サリン事件」もイメージのひとつにあったことでしょう。

日本にはとっても都合の良い言葉があります。「水に流す」です。
ワールドトレードセンター今
色々あってもお互いに水に流して、未来志向でいこうじゃない。そんな感じでしょうか?

自分でいつの間にか水に流していたことで、この後、更にショックを受けることになりました。

テレビに出ていた人たちとは?

空港閉鎖で身動きが取れなくなったため、会社の指示で先ほどチェックアウトしたホテルに戻りました。部屋のテレビでその後の経過を観たら、朝より状況がひどくなっていました。

その現実を受け止めかねている私の目に、もっとショックな現実がありました。

ニュース番組の司会者と一緒に映っていたのは、「Pearl Harbor Survivor」(真珠湾攻撃の生き残り)とタイトルをつけられた老いた男性達でした。当時の写真も映され、体験談を語っていました。
アメリカとしては、真珠湾以来の攻撃だったのです。 9・11でアメリカ人が感じたショックは、真珠湾を思い起こさせたということなのです。

この日、日本でどのような報道がなされたのか、私にはまったくわかりません。ですが、真珠湾の話題が出たとはあまり考えられません。どうだったのでしょうか?
昔の事。戦争だったから。仕方がなかった。色々言い訳はできても、やはり自分で勝手に水に流してしまっていたことを思い知らされました。

広島、長崎に関してはどうでしょうか?
私は関東生まれの関東育ち。祖父母の時代の話なので、自分には直接関係のない出来事。それでも、あれが無かったらもっと被害が出た、戦争を終わらせたから仕方がない、と水に流すことは到底できません。

💬
水に流せるのは被害者側だけであり、加害者ではないということ。人間の身勝手さを改めて感じた出来事でした。

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