日本人の質問 ⑪ レディーファースト

私が見た光景とは。。。

スーツケースのイラスト
 ①ツアーに参加した70歳代半ばのご夫婦の話。とにかくビデオ撮影の好きなご主人でした。
空港に到着し観光バスに乗るまでの間、2人分の荷物が入っている大きなスーツケースは奥様が運んでいました。小柄な奥様が必死でスーツケースを運んでいるのに、ご主人は片手に持ったビデオだけ。

②ロンドンのホテルのロビー内で日本人ビジネスマンの横を通りました。私がドアを押して外に出ているタイミングで、その人がすぐ後ろに歩いてきていたので、私はドアを押したまま待ちました。もちろん、その人が次にドアを持つと思っていたからです。するとその人は、私が手で押さえているドアをそのまま通過していきました。

③駅でエスカレーターに乗ろうとした時のことです。私が片足を乗せかけた時、横からぶつかりそうな勢いで割り込んできた若い男性がいました。ケガをしたくないこと、急いでいるのかな?と考え、その男性を先に行かせました。ところがその人は、私の前でずっと立ったままでした。エスカレーターの乗り方としてはもちろん正しいのですが、ぶつかりそうな勢いで乗ってくる理由は何だったのだろうと思いました。

④海外の眺めの良いレストラン。ひとりは景色に背を向け、もうひとりは景色が見えるというテーブルの配置でした。ツアー参加のご夫婦6組のうち、景色のよい席に奥様が座ったのは1組だけでした。ご夫婦間で問題はないのかもしれませんが、違和感がありました。見ているこちらの居心地が悪いです。

レストランの写真

感じたこととは?

恥ずかしい、情けない、でした。レディーファースト以前の問題です。
何でそんなに余裕がないのでしょう?何で相手のことを少しだけ考えられないのでしょう?

男女平等の時代に、ドアを開けてほしいとか、エレベーターに先に乗せてほしいなんて考えている女性は少ないと思います。でも上に挙げた例は、ちょっと考えたら相手や周りが不快な思い、居心地の悪い思いをしないというレベルの話です。

もう一つ言えば、周りの人からのこの男性の評価が、非常に下がる行為だということです。
どんなにその人が仕事で有能だとしても、大人としてするべきことができていないと判断されてしまうのです。

カルチャーショック

私が添乗員になって、駅の階段でスーツケースを持って降りていた時のことです。わざとぶつかってきた若い男性がいました。私は危うく落ちそうになり、必死でスーツケースと共にこらえました。スーツケースだけ落としても、周りの方に怪我をさせてしまったかもしれません。思い出すたびに冷や汗が出る体験で、トラウマになっています。「わざと」と思ったのは、あまり混雑していなかったことや、その男性が私を振り返って笑ったからです。

その時に思い出したのは、私が添乗員になる前に、初めての一人旅でアメリカを3週間まわった時のことでした。スーツケースを持っての移動や、列車の乗り換えは大変と少々心配していましたが、95%の確率で近くにいる人が助けてくれました。ある時にはたった10㎝の段差でも、たまたま横を歩いている人が、ヒョイっと、荷物を引き上げてくれました。

日本でそんな厚遇を受けたことがなかった私には、たいそうなカルチャーショックでした。
何て素敵な国だろうと感激したものです。ひとり旅でしたが、その時の楽しかった思い出が、現在の添乗の仕事を始めるひとつのきっかけになりました。

「階段ぶつかり事件」は逆のカルチャーショックですし、日本でスーツケースを持っていて手伝ってもらったことは1度もないと、改めて思いました。仕事で頻繁に空港に行きますが、外国人や年配者の女性の荷物を手伝う日本人の男性を見たことがありません。

私にだけ見えていない?

「日本人は親切」などとマスコミに取り上げられるインタビューをよく目にしますが、私にだけ本当の姿が見えていないだけなんでしょうか?
私の周りだけ、親切な人がいないのでしょうか?

厚遇を受けたことがある身としては、期待はしないものの、常に「残念」という気持ちが湧いてきてしまうのです。
「日本男児はシャイ」などと言うのはやめて、自分より弱い立場の人に、人としてできることをしてみてはいかがでしょうか?
それが結果的に、レディーファーストにつながる第一歩になるのではないでしょうか?

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