38年の時を経て
コロナ禍になって良かったことは何もないけれど、コロナがなかったら実現しなかったかも。。。と思うのが、歌舞伎で実現したいくつもの奇跡的な再演です。
私は歌舞伎を見始めてすぐに、当時の名コンビ「孝玉」の大ファンになりました。当然、前回の四谷怪談も見に行きました。
2020年4月、6月の「桜姫東文章」がコンビでの36年ぶりの再演、続くように今回の「四谷怪談」の38年ぶりの再演です。
何という幸せな時間だったことでしょう。
ひたすら美しかった桜姫とは対照的に
「四谷怪談・お岩さん」を知らない人はほとんどいないことでしょう。「怪談といえば。。」というくらい超がつく有名な話ですね。
「四谷怪談」を観るにあたり、今回久しぶりにイヤホンガイドを借りて聴いてみました。あらすじを知っているせいでかえって抜け落ちていた知識が、「忠臣蔵」との関わりでした。ご興味のある方は、詳細を調べてみて下さい。
産後の肥立ちが悪く、登場シーンからやつれて生気のないお岩。徹頭徹尾、人情のかけらもない極悪人の伊右衛門。
前回の「桜姫東文章」が美しく華やかだったのと対照的な、おどろおどろしい舞台です。舞台上の照明が暗いことも多いせいか、前の列の年配の男性は寝てしまっていました💦^0^
圧巻の玉三郎
毒薬が体に回り、もがき苦しみながら発する声のトーン。変わってしまった自分の顔を初めて鏡で見た時の、驚きと絶望の叫び。抜けてしまう髪に櫛を入れながら、つぶやくセリフの一つ一つ。絶命する間際に恨みの言葉を発し、空を掴もうとする手の指の1本1本の角度まで。
一瞬たりとも見逃してはいけません。まさに圧巻の演技でした。
初々しく可憐な千之助
劇中、お梅の役で出演しているのが仁左衛門の孫にあたる片岡千之助です。端正な顔立ちで、立役、女形の両方ができそうです。
ドキュメンタリー番組でのインタビューを見たことがあります。いかに祖父を尊敬し、憧れているかがひしひしと伝わってくる話しぶりでした。ここ数年、色々な役で仁左衛門との共演があります。
今回の四谷怪談では、極悪人と知らず、伊右衛門に思いを寄せるうぶな娘・お梅の役がぴったりでした。財産目当ての伊右衛門とお梅は結婚することになります。惚れた伊右衛門を見つめるお梅のきらきらした瞳と、憧れのお爺様との共演を喜ぶ千之助の瞳が重なり、感慨もひとしおでした。
11月には歌舞伎座の顔見世で仁左衛門との祖父と孫の連獅子が10年ぶりに予定されています。
前回はまだ子供でしたが、今回は若い獅子の魅力を存分に発揮してくれることを楽しみに待ちたいと思います。
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