日本人の質問③枕チップ

枕銭のイラスト
そもそも、枕チップって何?

以前読んだ英語の本に枕銭 Pillow tip, Pillow money の解説として「日本のガイドブックで、掃除をするホテルのルームメイドのために枕の下に置くように勧めているお金。その日本語を直訳したもの」とありました。

えっ!そんな言われ方?
それ以来何度も、ホテルで会った他の国の添乗員に聞いてみました。皆一様に「何それ?」とけげんな表情。一部の添乗員さんは「あ、日本人は置くんだよね」と言った人も。

日本では直訳して Pillow tip とも表現しますが、英語では Tip for service です。ということは、枕銭は関係なくなり、単にサービスに対するチップという意味になります。
Pillow money という言葉もあります。これは貴族や大金持ちで、メイドを雇っている人が性的サービスの代償として、またはホテルの宿泊客が娼婦に支払うお金の意味もあります。
            
枕チップの始まりって?

日本で海外旅行が自由化された当時は、勝手がわからずホテルに迷惑をかける人が多かったとか。

「夢のハワイ旅行」も部屋に入ると、どう使ってよいのか迷うものが多かったはず。
夢心地で、添乗員の話はうわの空。「何か言ってたねぇ~」などと言いつつ、「お風呂場」へ。シャワーカーテンをバスタブの内側に入れなかったり、日本式にバスタブの外で体を洗ってバスルームを水浸しにしたなんて序の口。
洋式トイレの使い方がわからず、便座の上に乗って用を足し、バスルームを汚すことさえあったそうです。そのたびに添乗員は呼び出されて、ホテルのスタッフに平謝り。

ホテルからは旅行会社にもクレームが!
お客様も今までに経験のない使い方をしなければならなかったので大変でした。
日本では元々、旅館で部屋係の仲居さんに、「心づけ」を渡す習慣がありますし、アメリカのチップの習慣を取り入れて、お客様に枕銭を慣習として説明し、置くようになったとか。

旅行会社では?

私が添乗する旅行会社のパンフレットや最終案内で、チップについての項目を設け、目安を説明しています。この場合、ホテルのランクに関わらず、ひとり1泊につき1ドル又は1ユーロ、又はその金額に近い現地通貨の目安が示されます。

このために困ること。。。日本にいるときから、「細かいお金がない」と心配し、添乗員が細かいお金にしてくれると思っている人がいます。添乗員は現地のガイドや運転手にもチップを払うので、そうそうお客様のご要望には添えないのです。また、ホテルのフロントで「スモールチェンジ!」と叫んで拒否されると、「何でこんなサービスの悪いホテルを使っているんだ!」と現地人に言えない「うっぷん」を、添乗員にぶつけてくる人もいます。

このために良いこと。。。各国にアンケートをして「どこの国の客が一番か?」という質問にダントツで1位になったのが日本人です。元々、日本の人は部屋をきれいに使いますよね。
ベッドの上でルームサービスの食事をして、しみをつけたりする人はほとんどいないはず。
それなのにチップをかなりの確率で置いていく。ただし、ホテルにとって不思議なことがあるそうです。後から旅行会社を通じてクレームを言ってくるのはほとんどが日本人。なぜ、その場で言わないの?と思われているそうですが、「言えないから」ですよね💦なんだか悲しい。

お客様からの質問
オーストリアの街の風景

「枕銭はいくら?」「枕チップは払わないといけないの?」「細かいお金がない時は添乗員さんが細かいお金に両替してくれるのよね!」etc.
何十回も海外旅行に行った!と出発前の電話で自慢する人まで、平気で聞いてきます。
「旅のしおりの〇ページに記載してありますよ」と言っても、「だから、いくらなの?」と返す人が多いです。
あと〇〇人に電話しないといけないのに、詳しく問答しているとすごく時間がかかりそう!
「目安ですし、義務ではありません。詳しくは現地で改めてご案内します」と言ってもムダ。「以前行った時と同じでいいですよ」と言うと、黙り込む。。。ホント困ります。

私がする枕チップの説明(クルーズなど、特殊なツアーは除く)

結論*枕銭は置いても、置かなくてもどちらでも良いです。置かなかったことを理由に掃除がされないことはありません。置いたのに掃除がいい加減だったこともあります。チップを置くことで感謝の気持ちを伝えたい方は、昼間のうちから小銭を手に入れて準備をして下さい。特に汚してしまった時などは置いてあげて下さい!です。

カナダの有名ホテルでルームメイドの仕事をしている日本人に聞いたところ、いわゆる枕銭が置いてあるのを見たことはほとんどないそうです。冒頭で書いた通り、外国人は枕銭にあたるものを知らない人も多いからでしょうか?

また、ホテルのスタッフが掃除をしながら、そこにどこの国の人が宿泊していたのか?知ることはまずないそうですが。。。枕の上に1ドルがあり、隅に置いてあるスーツケースを見ると、たいてい日本の旅行会社の荷札が付いているのだそうです。

私の経験では、デスクの上に「Thank you」とメッセージをつけてチップを置いたのに、ゴミ箱のゴミが片付けてなかったり、バスルームの掃除を忘れられたこともあります。単なるミスかもしれませんが、少々がっかりしました。

枕チップを置かないと「収入がないのでは?」と心配してくれる優しい人がいます。ですが、そんな仕事を誰がするのでしょう?20部屋も掃除して、「今日は1ドルも収入がない」なんてありえません。高給取りではないかもしれませんが、チップだけが収入なんてひどいホテルはありません。まともな国では最低賃金法もあるので心配しないでください。
 💬    
いつも悩ましい枕銭の話でした。(レストランやタクシーとは別の話ですよ)
説明するたびに「皆さんはどうしてるのかしら?」が始まります。
自分で決められない日本人」が必ず何人かいます。                                  

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